20周年記念書展 無事盛況のうちに終了!
2024年9月22日(日)〜23日(祝・月)
時間:10時〜16時 入場無料
場所:旧大津公会堂 2階多目的室
https://kyu-otsukoukaidou.city.otsu.lg.jp/
小学生から大人まで
心を込めて制作した書の作品を展示
同時開催「水竹山房コレクション」江戸後期〜昭和の古書画
ご挨拶
謹啓 本日はご多忙の中、ご来場賜り、誠に有難うございます。早いもので、書道教室を開設以来、二十周年が過ぎました。無事、これまで教室を続けることができ、この度、記念書展の開催まで叶いましたのは、ひとえに皆様方からの温かい御支援、御厚情の賜物と、心より厚く御礼申し上げます。
私たちの教室は、平素より「古典臨書に努め、伝統的書美に着想して創作すること」を練習の基盤として取り組んでいます。しかし、いざ書展作品の創作となると、各自がその言葉の選定から苦労し、完成までは試行錯誤の連続でした。今年は勉強会を重ね、隷書体や条幅など新しい挑戦をみんなで試みました。お目だるい拙作ばかりとは存じますが、何卒ご高覧賜り、暫し書の世界をお楽しみいただけましたら幸甚です。
二十一世紀、言葉は「書く」よりも「打つ」ことの多い時代となりました。硬筆ですら面倒臭いと敬遠され、記号化された文字が、便利に打たれ汎用されるという、時の流れを止めることはできません。そんな時代だからこそ、墨と筆で言葉を自分らしく表現すれば、同じ言葉でも、人の心の今一歩奥まで届けられるのではないか…そんな「書の力」を私は信じています。そして、その面倒臭い営みに費やす時間が、楽しくて仕方がないのです。墨と筆で表現された大切な言葉が、誰かの人生、生活の一部となって溶け込み、人の心を支えてゆく…そんな歴史上で長くあった書の世界が、これから先の未来もずっと受け継がれ、生き続けますように…。
最後になりましたが、本日ご来場の皆様の御健康と御多幸を、心よりお祈り申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。 謹白
令和六年(二〇二四年)長月吉日 宮川 恵風
小中学生の作品コーナー2
初めに、名前の一字の草書体を薄墨で書き、
その上に俳句を散らし書きし、色紙作品を作りました。
右から
美濃部明花:花「目覚むれど 秋朝明けぬ 二度寝かな」
浦添 緑:緑「エレクトーン ひけると楽しい 実る秋」
森田愛子:愛「梨食べて 読書がしたい 秋の空」
森本彩季:彩「馬と会い 今日も練習 秋の風」(乗馬やってます)
井尾聡佑:聡「クリスマス 家族で祝う 誕生日」(12/24生まれ)
岸川聡真:真「俳句無理 俳句書くより ポコとラン」(ポコは愛犬)
出品作品一覧
《大学生》
1年 <横田浩香>
色紙 創作「飛翔」
3年<塩谷茉莉花>
軸 条幅 創作 高啓詩
《一般》
<足立治彦 >
軸 創作 陶淵明詩「飲酒 其十七」
色紙「海鷗戯春岸」
<足立真知子>
額 創作「愛」
色紙「秋菊有佳色」
<安土悦子>
横額 創作 王績「贈程処士」五絶詩
色紙「山水有清音」
<荒木美紀>
軸 臨書 王献之「豹奴帖」
額 「慈」二種、「希」、「敬」
<今西みどり>
軸 創作 蘇軾詩「中秋対月」七言二句
双幅一対軸 臨書 傅山「野花如雪七言詩」
色紙 「江月照我心」
<浦添由佳里>
軸 八切 創作 禅語「行雲流水」
<樺山めぐみ>
軸 創作 周南峰 七言句「世間安楽為清福」
横額 創作 王献之尺牘の語
横額 創作「花開還更新」
<川本史子>
軸 創作 「白居易詩 臨都驛答夢得六言二首 其一」
<川本帆乃香 >
軸 長条幅 臨書 王鐸 「題荘厳寺休公院詩軸」
<塩谷留実子>
軸 臨書 趙孟頫「蘇軾詩 前赤壁賦」より
<高見陽子>
色紙額 禅語「百事楽嘉辰」
色紙 「和気致祥」
<田畑直美>
軸 八切 「松樹千年翠」
額 「一期一会」
<中村知子>
軸 臨書『曹全碑』より「風雨時節…」
<松田正子>
軸 条幅 「風吹草低山月小」
軸 八切 臨書米芾『蜀素帖』より「山清気爽…」
<宮川恵実子>
横額 創作 吉野弘詩「草」
軸 条幅 仮名創作 本居宣長和歌
軸 条幅 創作 隷書 十七条憲法抄
<森本千晶>
軸 臨書 『曹全碑』より 「賢孝之性根生於心」
色紙「朝鶯雪裏新」
<山川明子>
軸 八切 「平常心是道」
円窓色紙 「笑門来福」
<吉田佳子>
軸 八切 「任重而道遠」
色紙「無事」
<若代修山>
額 「人生如朝露」
共同作品 隋・智永「真草千字文」節臨
千字文とは、書の手本として使うために用いられた漢文の長詩で、すべて異なる千の文字が使われています。隋代の智永の「真草千字文」の一部を、二十名で一字ずつ書きました。真書は楷書の意味で、真草とは楷書と草書が左右に並べて書かれており、文字を覚えるためのテキストのようなものです。その草書の部分だけを臨書した合作作品です。
<釈文> 沈黙寂寥 求古尋論 散慮逍遙 欣奏累遣 感謝歓招(沈黙して寂寥たり。古を求めて尋論し、慮を散じて逍遙す。欣びて奏りて累い遣り、慼い謝りて歓び招る。)
<大意> 沈黙して物静かである。古典の意義を探究し、古の賢人たちの道を尋ねて議論し、心の憂さを晴らし、足の赴くままぶらぶら歩く。喜ばしいことが集まってわずらわしい事が消え、慼いは去って喜びがやってくる。
水竹山房コレクション コーナー
出品一覧 写真右から
一、姫島竹外「設色老少年図」軸
二、中西耕石 蘭菊双幅軸
三、書尾上柴舟「源氏物語 うす雲」
画丹羽黙仙
四、貫名菘翁「山水画賛」軸
五、河鍋暁斎「梅に鶯」軸
六、小室翠雲「百合花画自賛」軸
七、山縣有朋 和歌軸「魔城秋目歌」
ご挨拶
謹啓 秋涼の候、ご来場の皆様におかれましては、益々御清祥の御事とお喜び申し上げます。
さて、前回書展に引き続き、会場の一部にて「水竹山房コレクション」、江戸後期~昭和初期の古書画軸の展示を致しました。水竹山房は、私の祖父、曽祖父が生前に収集したコレクションです。前回は、儒学者の書軸が中心の展示でしたが、背景も内容もなかなか難解でありましたので、今回は「花鳥風月」をテーマに秋の親しみやすい書画軸をご覧いただきます。絵と書(賛)が融合した一つの芸術郷、美の世界が一本の軸に表現されています。この時代、文人と言われた人々の多くが、思想と芸術を共有し、盛んに交流して、優れた作品を生み出しています。
恒久不変の自然や、身近な動植物を題材にした作品たちは、現代の我々にとっても、朽ちることなく、共感し楽しめるものではないでしょうか…。これらの軸は、亡き祖父が四季折々、床間にかけて楽しんでおりましたので、幼い頃の私の記憶に刻まれ、心に染み込んだ懐かしいものです。暫し、お付き合い下さいましたら、幸甚に存じます。 謹白
令和六年秋分 宮川恵実子
宮川恵風 作品① 調和体 吉野弘詩「草」
(釈文)人さまざまな 願いを 何度でも 聞き届けて下さる 地蔵の傍らに 今年も 種子をこぼそう
(感想)
芸術としての漢字仮名交じりの書(調和体)は、まだ古典も書法も無く、暗中模索の分野と言って良いでしょう。何もかも勉強不足で未熟な私が書ける筈もない、でもいつか書きたい…と思いながら、あっという間に二十年以上が過ぎ、挑戦なくして何も始まらないという心意気だけで制作しました。王羲之尺牘の叙情感を基に制作したつもりですが、つくづく難しかったです。草の呟きとも言えるような温かい言葉に、大自然の無限の優しさを感じ、皆様の心にお届けすることを、ひたすら念じて書きました。ご批正よろしくお願い致します。
宮川恵風 作品② 隷書軸「十七条憲法抄」
(釈文)一日、以和為貴、無忤為宗。人皆有党。亦少達者。以是、或不順君父。乍違于隣里。然上和下睦、諧於論事、則事理自通。何事不成。…(後略)
(訓) 一に曰く、和をもって貴しと為し、忤ふこと無きを宗と為す。人皆党あり。また達れる者少し。ここをもって、或は君父に順わずして乍ち隣里に違う。しかれども、上和ぎ、下睦びて、事を論ふに諧へば、則ち事理自ら通ず、何事か成らざらむ。…(後略)
(意味)お互いの心が和らいで協力することが貴いのであって、むやみに反抗することのないようにせよ。それが根本的態度でなければならぬ。ところが、人にはそれぞれ党派心があり、大局を見通している者は少ない。だから主君や父に従わず、或は近隣の人々と争いを起こすようになる。しかしながら、人々が上も下も和らぎ睦まじく話し合いができるならば、事柄は自ずから道理に叶い、何事も成し遂げられないことはない。…(後略)
(感想)書道史から見て、隷書体の十七条憲法など存在しないだろう…ならば私が書いてみよう、という好奇心から生まれた作品です。全文を書くことを諦めて、心に響く章段を抄出して書きました。内容は、現代の私たちにも通じる普遍性があります。是非この機会にご一読くださいませ。
宮川恵風 作品③ 本居宣長和歌軸
(釈文)敷しまの 倭ごころを 人とはば 朝日ににほふ 山ざくら花
(意味) 古来からの日本の心とは何ですか?と人に問われたならば、朝日に映えて美しく輝く山桜の花のことであるよ
(感想) 松坂を訪れて以来、本居宣長が好きになり、初めての仮名作品にしました。戦時下での負のイメージが拭えない有名な歌ですが、膨大な研究の結論を一言で言い当てた簡潔明瞭さは流石であり、令和に改めて語り継ぎたいと思いました。造形芸術としての昇華を目指す時、変体仮名はとても有効ですが、言葉を伝えるには障害となります。多くの課題を考え、残したままで、中途半端な作品ですが、私の最初の第一歩。仮名作品ならではの情趣と、墨の濃淡による言葉の奥行きを表現できるように、チャレンジしました。
書展準備会9/15
みんなで、共同作品を完成させたり、ご来場記念の品を作ったりしました。
また子どもたちの作品表具も頑張ってやりました。
お疲れ様でした。